特養からおおきなわ

福祉について発信します

神様のプレゼント 6話

暗闇に浮かぶ世界が形を変え崩れていき、明かりの点いていない白い2本の蛍光灯が天井に浮かび上がる。

 そうか、またこの日がやってきたんだな。
 頭がすっきりしてくる。

 じいさん、起きてるか

 「鈴木さん、起きとるで」

 いつものように他愛もないおしゃべりをするが、俺がふと、

な~じいさんよ。

じいさんにも家族はいるんだろう。

誰も来てる様子がないが寂しくないのかと尋ねる。

 「息子が一人いるがの、あいつも70歳超えて、ばあさんの面倒も看んといけんし、自分の事で精一杯だろうよ」
 「まあ、孫やひ孫には会いたいけどな」
 「いつ頃までだったかの、よく来ていたのは」
 
 答えるじいさんの声はどこか寂しげだった。

 なあ、じいさん。じいさんはここに来て20年になるんだろう。
 じいさんは幸せか。

 じいさんはからは返事がない。俺は続ける。俺はこんな風に動けなくなって、幸せじゃないよ。

 こうやってまともな時もあるけど、ほとんどがボケた状態だしな。何故、こうなっちまったんだろうな。 なあ、じいさん。
 
じいさんは何も答えずに、ただ、頷いているだけだ。
 
なあ、じいさん。~~~~~~~~ なあ、じいさん。
俺はしゃべり続ける。

つづく