特養からおおきなわ

福祉について発信します

フィクション

神様のプレゼント 最終話

「鈴木さん朝ですよ~ 起きて下さいね~」 声が聞こえ,車椅子に座らせられる。 隣のベッドシーツが綺麗に光っているのが見える。 騒がしく静かで、暗闇と蛍光灯の世界が流れていく。 そしてまたいつもの日がやってきた。 いつもと違い朝方のようだ。 隣のベ…

神様のプレゼント 7話

暗闇に浮かぶ世界の中で、親子が遊んでいる。 誰なのかは分からない。 ふいに子供が泣き出す。それを見つめる母親の優しい目。 子供の泣き声が大きく聞こえる。それがいつまでも続く。続く。 その音がナースコールの音に変り、世界が崩れいつもの天井が映し…

神様のプレゼント 6話

暗闇に浮かぶ世界が形を変え崩れていき、明かりの点いていない白い2本の蛍光灯が天井に浮かび上がる。 そうか、またこの日がやってきたんだな。 頭がすっきりしてくる。 じいさん、起きてるか 「鈴木さん、起きとるで」 いつものように他愛もないおしゃべり…

神様のプレゼント 5話

いつものように車椅子に座らされる。 「お風呂に行きましょうね」と、 優しい声が聞こえ、長い廊下の蛍光灯の明かりの下、車イスは進んでいく。 「はい、洋服をとりましょうね~」 服を脱がされる。 寒さを感じるが、そんな事はお構い無しに硬い椅子に移る。…

神様のプレゼント 4話

「所で鈴木さんよ。この間から働いている職員さんは優しくて綺麗じゃの」 「わしは、 あの子の優しい声を聞くと幸せな気分になるんじゃよ」 じいさんは、日頃の事を良く覚えている。いつもは「う~ あ~」しか言わないのだが。 俺は、じいさん程覚えていない…

神様のプレゼント 3話

真夜中に目が覚める。いや覚めていたのだろうか少しずつ意識がはっきりしてくる。 そろそろ隣のじいさんも起きるころだろう。 そう考えていると、やはり声が聞こえてきた。 「鈴木さん、起きとるか」 その声はいつもと変わらない。 俺は嬉しさを隠しながら応…

神様のプレゼント 2話

整列した蛍光灯が並ぶ白い世界の中、テーブルの前にボンヤリと座っている。 1時間たったのだろうか、それとも10分なのかわからない。 いつの間にか目の前に食事が置かれている。 周りから声がとびかう。 「おはようございます」 「美味しいですか~」 「…

神様のプレゼント 1話

「鈴木さん、朝ですよ~ 起きて下さいね〜」 声が聞こえると同時に布団を上げられ、抱きかかえられる様にベッドの端に座らさられる。 朝なのか夜なのか、寒いという感覚が一番に出てくる。 「良く、眠れましたか~」「今日は寒いですね~」 声が響く。いつ…

晴れときどき雨 11話(生活相談員) 朝日を正面にとらえ

朝日を正面にとらえ、いつものように車を走らせる。 今朝、入院中の方が亡くなったとの連絡があった。 多くの福祉事業には定員というものがあり、その使命、そして事業性を考えれば定員は常に満たさなければいけない。 介護老人福祉施設であれば退所の時は、…

晴れときどき雨 10話 (施設ケアマネ) 介護業務の合い間を見て

介護業務の合い間を見て、施設サービス計画を立てる。 施設ケアマネの仕事は、入所している方の施設サービス計画を立てることだけど、その他にも要介護認定の管理、サービス担当者会議、モニタリングと計画の管理もしないといけない。 そして今日はサービス…

晴れときどき雨 9話(介護職)  介護の仕事は何をするの?

介護の仕事は何をするの? って、よく聞かれる。 そのたびに上手く説明できないもんだから、とても、もどかしい思いをするのだけど。 特養の仕事って なんて言えばいいのかな〜 ん〜 とりあえず朝の仕事から考えてみようかな。 早番勤務は7時からで、出勤す…

晴れときどき雨 8話 (介護職) 夜勤か~

夜勤か~ 楽しいはずのショッピングも、なんとなく気が重い。 もう勤めて3年になるけど、夜勤前の気持ちはまだ変わらない。 「気にしなければいいじゃん」 なんて、友達は言うんだけど、やっぱり考えてしまうんだよね。 わたしの仕事は特養の介護職で、3年…

晴れときどき雨 7話 (生活相談員) 仕事も片付き

仕事も片付き、陽のあるうちに仕事場を後にする。 いつもの十字路を曲がるとオレンジ色の西日が飛び込んできた。 まぶしさに目を細めながらも久しぶりの光景に嬉しさを感じてしまう。 その西日のまぶしさを受けながら、信号待ちで車を停める。 この仕事をし…

晴れときどき雨 6話(生活相談員) 生活相談員の仕事は多岐にわたる

生活相談員の仕事は多岐にわたるが、一番大きいのは入退所の管理だろう。報酬に関わる事なので欠員を長く出してはいけない。常に申込者の管理と援助が必要なのである。 次は預り金管理だろう。施設にもよるが入所者の通帳を預る所も多く、その出納管理を生…

晴れときどき雨 5話(生活相談員) 今日の夜勤の時

「今日の夜勤の時、おかしな事があったんだよね」 夜勤明けの介護職員が話しかけてきた。 夜中の2時ごろ201号室の前を通ったら何やら話し声が聞こえてきたらしい。 「鈴木さんらしき人の声で、じいさん じいさんって、何らや隣りと話しをしているようだ…

晴れときどき雨 4話(生活相談員) 高齢者施設では

高齢者施設では施設内の看護では難しいと判断された場合、近くの病院に受診になる事が多く、そういう時は家族に連絡し病院で待ち合わせをする。施設によっては介護タクシーを使う所もあるのだが、ここでは施設側で送迎を行っている。 家族との調整を済まし病…

晴れときどき雨 3話(生活相談員) 金田さんが呼んでましたよ

「金田さんが呼んでましたよ」事務所で仕事をしていると、介護の職員から声をかけられる。いつものやつかなと考えながら、「はい、今から行きますね」と応える。金田さんは今年80歳になる利用者で入所して10年になるのだが、要介護度が高い 介護老人福祉…

お知らせ

晴れときどき雨今年いっぱいお休みします。来年からよろしくお願いします。

晴れときどき雨 2話(生活相談員) あいさつを交わした後

あいさつを交わした後、 机の上を軽く整理し今日の仕事の再確認をする。 私の仕事は介護老人福祉施設の生活相談員で、忙しくも充実した毎日を送っている。 食堂ホールに向かうと職員の声と利用者の声が聞こえてくる。いつもの光景だ。 「どうぞたくさん頂い…

晴れときどき雨 1話 (生活相談員)朝日を正面にとらえ車を走らせる

朝日を正面にとらえ、車を走らせる。 信号にもかからず今日はスムーズだ。 仕事の段取りや、昨日の事等をボンヤリ考えているといつものように施設の建物が視界に入り近づいてくる。 事務所の扉を開け「おはようございます」と挨拶し、タイムカードを打刻す…