特養からおおきなわ

福祉について発信します

神様のプレゼント 2話

 

整列した蛍光灯が並ぶ白い世界の中、

テーブルの前にボンヤリと座っている。

 1時間たったのだろうか、それとも10分なのかわからない。
 いつの間にか目の前に食事が置かれている。

 周りから声がとびかう。

 「おはようございます」

 「美味しいですか~」

 「しっかりと食べて下さいね~」

 自分が何をしているかわからない。

 腰が痛い、横になりたい、眠りたい・・・・・

意識が混乱し、暗い世界が広がっていく。
 

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 「鈴木さん、朝ですよ~ 起きて下さいね〜」 
 
懐かしいような、騒がしいような、
響きのある声がまた聞こえてきた。
 

つづく

神様のプレゼント 1話

 

「鈴木さん、朝ですよ~ 起きて下さいね〜」
 
 声が聞こえると同時に布団を上げられ、抱きかかえられる様にベッドの端に座らさられる。

 朝なのか夜なのか、寒いという感覚が一番に出てくる。

 「良く、眠れましたか~」「今日は寒いですね~」

 声が響く。いつの間にか車椅子に座っている。座らされている。

 蛍光灯の灯りが眩しくひんやりとした静かな廊下に出て車椅子をただ漕ぐ。同じように車椅子が2~3台止まっている。

「自分で漕いで下さいね~」

声が響くと同時に忙しない人の動きを感じる。

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つづく

晴れときどき雨 11話(生活相談員) 朝日を正面にとらえ

  朝日を正面にとらえ、いつものように車を走らせる。

 今朝、入院中の方が亡くなったとの連絡があった。

 多くの福祉事業には定員というものがあり、その使命、そして事業性を考えれば定員は常に満たさなければいけない。

 介護老人福祉施設であれば退所の時は、このようにほとんどが亡くなった時である。

 その連絡を受けたとき、すぐに次の方を考える。

 その為に日頃から調査と面談,入所検討会議を進めている。

 居宅系であれば施設への入所や入院による利用終了も多いだろう。

 どの事業であれ利用者の確保というのは大切だと思う。

 しかし機械的になり、目的を失ってはいけない。

 朝日の中、雨が落ちてきた。しずくが反射しキラキラと飛び交う。

 ときどき雨は降るけれど、それもたまにはいいでしょう。 

 おわり

次回作    「神様のプレゼント」  

不定期予定です。

 

晴れときどき雨 10話 (施設ケアマネ) 介護業務の合い間を見て

 介護業務の合い間を見て、施設サービス計画を立てる。

 施設ケアマネの仕事は、入所している方の施設サービス計画を立てることだけど、その他にも要介護認定の管理、サービス担当者会議、モニタリングと計画の管理もしないといけない。
 そして今日はサービス担当者会議を予定している。

 もし、わたしが介護される立場になったのなら。
 「計画なんて立てずに好きな事ができるよう支えてほしい」

 そう考えながらも、その人の生活を支えるために計画を立てなければいけない。

 もし、わたしが介護される立場になったのなら。
 「必要な時にだけ介護してもらい、後はのんびりと過ごしたい」

 そして、サービス担当者会議が始まった。
 介護、看護、訓練員、栄養士、生活相談員、わたし。
 現状、今後について話し合う。

 もし、わたしが介護される立場になったのなら。

 「無理はさせないで、静かに見守っていてほしい」


 施設ケアマネ。施設サービス計画。
 わたしはみんなの生活を支えることができているのだろうか。


つづく

晴れときどき雨 9話(介護職)  介護の仕事は何をするの?

介護の仕事は何をするの? って、よく聞かれる。

 そのたびに上手く説明できないもんだから、とても、もどかしい思いをするのだけど。

 特養の仕事って なんて言えばいいのかな〜
 ん〜  とりあえず朝の仕事から考えてみようかな。

 早番勤務は7時からで、出勤するとすぐ利用者を起さないといけないんだけど、自分で起き上がれる方も少なくて、ほとんどの方を車イスに乗せたり、側について歩いたりと、起床して洗面して、食堂ホールへって所から始まる。

 食事の準備、食事介助、片付、お部屋への誘導、そして入浴って、朝はホント忙しい。

 入浴の介助も楽しいけど、一人で大勢の方を介助しないといけないから焦る事も多いな~ 楽しみにしている方がほとんどだから、ゆっくり入って欲しいんだけど。

 トイレ介助、オムツ交換も慣れるまでは大変だったな~

健康管理の面でとても大切な事だから、今では観察もしっかりとやってるけど。

 そういえば主任が面接の時に言っていたっけ。

 「人が生活する上で行う行為に対して援助をするのが仕事です」
 って。
まあ、それだけではなくて、最近では「科学的な介護」をテーマに、おむつゼロ、骨折ゼロ、胃ろうゼロ、拘束ゼロ、褥瘡ゼロ。 「え~ すべてゼロなの~!?」 みたいなのと、認知症ケア、リハビリテーション、口腔ケア、看取りケアの4つ自立支援。 「うわ、完璧じゃん」 というものまで求められているんだからホント大変。
 こうして考えるとやる事多いな~ 

 そういえば、明日はサービス担当者会議だったけ。私の担当である鈴木さんが対象だったな。

 施設のケアマネージャーがこのサービス担当者会議をまとめるんだけど、
 介護職に看護職、生活相談員、管理栄養士、訓練員とそれぞれの専門職が関わるからね。ケアマネージャーも大変だろうな~。
  

つづく

晴れときどき雨 8話 (介護職) 夜勤か~

夜勤か~

 楽しいはずのショッピングも、なんとなく気が重い。

 もう勤めて3年になるけど、夜勤前の気持ちはまだ変わらない。

 「気にしなければいいじゃん」

なんて、友達は言うんだけど、やっぱり考えてしまうんだよね。

 わたしの仕事は特養の介護職で、3年前に専門学校を卒業し、すぐ特養に就職した。理由? ん~何でだろう。介護の技術が身につくだろうし、大勢のおじいちゃん、おばあちゃんと関われるだろうと思ったからかな。

 仕事は三交代制で夜勤は夜中の0時から9時までなんだよね。

 たまに、新人が間違えて次の日の夜に出勤するなんて事もあったけ。

 まあ、とっても早い早朝勤務と言えばいいのかな。 休 夜勤 こんな感じ。

 他の施設では二交代制の所もあるけど、どっちがいいんだろう。二交代制は、大体夕方から入って翌日の9時ぐらいまでだろうけど、拘束時間長いしね。

 「ねえ、聞いてる?」
 一緒にショッピング中の友達が声をかけてきた。
 うん、聞いてるよ。と応えるがあまり頭には入っていない。

 「この後、どうしようか~」と、まだ遊ぶ気のようだ。
 夜勤の事を考えると、早く切り上げないとな~と思うんだけど、付き合ってくれてる友達にも悪いしな~ なんて考えてしまう。

 「そんな、夜勤がある仕事辞めちゃえば」と、友達にも良く言われるんだけどさ。

 夜勤も大切な仕事だしね。

 「じゃあさ、カラオケ行こうよ」 友達は考えたふりをしながら提案した。

 最初からその気だったのにね。太陽がまぶしく、こんなにいい天気なのにな~って思いながらも、頭の中では大好きなドリカムが流れていた。

晴れときどき雨 7話 (生活相談員) 仕事も片付き

 仕事も片付き、陽のあるうちに仕事場を後にする。
 
 いつもの十字路を曲がるとオレンジ色の西日が飛び込んできた。

 まぶしさに目を細めながらも久しぶりの光景に嬉しさを感じてしまう。

 その西日のまぶしさを受けながら、信号待ちで車を停める。

 この仕事をし始めた頃、近隣施設の職員が入所者の預り金を着服して新聞沙汰になった事がある。

 この方とは仕事の付き合いもあり、人当たりもよく会議などでのリーダーシップもあった。
 
 着服した金は全額返済したとの事だが、もちろん仕事は辞した。「まさか、あの人が」なんて月並みな事を思ったが、どのような会社であれ着服事件は何年かに一度は話題にあがる。報道されないものもあるだろう。

 管理体制が機能せず、一人に任せすぎていたんだろうなとも思うし、管理しているお金を、お金として見てしまったんだろうな、とも思う。

  そう、昔の事を思い出しているうちに、西日のまぶしさは消え、昼と夜の境目に差し掛かっていた。

「今何をしているのかな」と、考えながら、ヘッドライトを点灯させアクセルを踏み込む。



つづく