特養からおおきなわ

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「社会福祉法人の認可について」の一部改正

1 厚生労働省社会福祉法人の認可について」の一部改正を通知

~現況報告書のインターネットでの公表を義務化

5月29日厚生労働省は「社会福祉法人の認可について」の一部改正について を発出し、各自治体に通知しました。(施行日 平成26年4月1日)

 

「国民に対して経営状態を積極的に公表し、透明性を確保すること」

は、社会福祉法人の責務であるとし、経営情報のインターネットによる公表や、所轄庁への現況報告を電子データにより行うことを新たに定めた。

 

主な改正点は以下の通りです

(現況報告書の様式改正)

①現況報告書を全国統一の様式とし、電子データによる提出とする。

②現況報告書の添付書類である決算書類をエクセル様式による提出を義務付け(平成25 年度決算分は経過措置あり)

③現況報告書等(決算書類を含む)を、エクセルまたはPDFの形式によりインターネットによる公表を、法人に義務付け。

 

 

社会福祉法人の地域性、透明性がより高まることを期待したいですね。

神様のプレゼント 7話

暗闇に浮かぶ世界の中で、親子が遊んでいる。
 誰なのかは分からない。

 ふいに子供が泣き出す。それを見つめる母親の優しい目。
 子供の泣き声が大きく聞こえる。それがいつまでも続く。続く。

 その音がナースコールの音に変り、世界が崩れいつもの天井が映し出される。

 じいさん起きているか。

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 じいさんどうした

 「あ~ あ~ 鈴木さん起きてるで」

 なんだじいさん、元気がないな

 「あ~ 鈴木さん、最近調子が悪くてな」
 「ご飯もよう食べられんし、こうしているだけでも辛くての」

 じいさんでもそんな事あるのか。120歳まで生きる言っていただろうよ。

 「あ~ そうじゃの」       「けど、しんどいわ」

 「わしもそう長くはないだろうな」

 じいさんなら大丈夫だよ

 「いや、鈴木さん。自分の事は自分が良く分かるよ」

 「まるで、自分の身体じゃないようじゃ」

 「次のこの日は迎えられんかもしれないの」

 そんな弱気な事を言うなよじいさん。

 「ほほ、そうじゃの鈴木さん」

 「しかし、ほんとにお迎えが近いじゃろうよ」

 「しんどいから、もう寝るわ」

 「鈴木さんよ、ホンマありがとな」

 おい、じいさん おい、じいさん     じいさんよ

 つづく

2025年はピークじゃない 減らない介護ニーズ

減らない介護ニーズ

 厚労省が推進する地域包括ケアの当面の目標は2025年だ。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、介護のニーズが爆発されるとされる。つまり2025年は終わりではなく始まりだ。

 75歳以上の人口は2025年までの間、急速に増え続け2180万人。その後、2060年までの35年間、減ることはなく、このレベルで推移する。75歳以上人口は2030年頃から伸びなくなるが、その後10年間は85歳以上人口が増える。つまり、介護のニーズはさらに増えることになる。

 介護のマンパワー不足は、ミクロレベルでも差し迫った問題だ。厚労省の試算では、現在、149万人いると推計される介護職員は、2025年には237万~249万人必要になるとしている。つまり、100万人以上を上積みしなければならなくなる。
 厚労省では、毎年年間7万人の確保が必要とする推計をしている。ただし、辞める人も大勢いるのがこの業界だ。厚労省離職率15%で計算しているが、その数は年間22万人にもなる。
 つまり新規の入職者を30万人以上確保し続けないと、年間7万人の確保は難しい。

 処遇改善、キャリアパスの形成、魅力ある職場づくりはもちろん大切だが、抜本的な対策にはなりそうもない。

 ひとつだけ言えるとすれば、持続可能な経営には「辞めさせない」のが一番ということだけだ。

 シルバー新報 平成26年4月11日 より抜粋

神様のプレゼント 6話

暗闇に浮かぶ世界が形を変え崩れていき、明かりの点いていない白い2本の蛍光灯が天井に浮かび上がる。

 そうか、またこの日がやってきたんだな。
 頭がすっきりしてくる。

 じいさん、起きてるか

 「鈴木さん、起きとるで」

 いつものように他愛もないおしゃべりをするが、俺がふと、

な~じいさんよ。

じいさんにも家族はいるんだろう。

誰も来てる様子がないが寂しくないのかと尋ねる。

 「息子が一人いるがの、あいつも70歳超えて、ばあさんの面倒も看んといけんし、自分の事で精一杯だろうよ」
 「まあ、孫やひ孫には会いたいけどな」
 「いつ頃までだったかの、よく来ていたのは」
 
 答えるじいさんの声はどこか寂しげだった。

 なあ、じいさん。じいさんはここに来て20年になるんだろう。
 じいさんは幸せか。

 じいさんはからは返事がない。俺は続ける。俺はこんな風に動けなくなって、幸せじゃないよ。

 こうやってまともな時もあるけど、ほとんどがボケた状態だしな。何故、こうなっちまったんだろうな。 なあ、じいさん。
 
じいさんは何も答えずに、ただ、頷いているだけだ。
 
なあ、じいさん。~~~~~~~~ なあ、じいさん。
俺はしゃべり続ける。

つづく

神様のプレゼント 5話

いつものように車椅子に座らされる。

 「お風呂に行きましょうね」と、

 優しい声が聞こえ、長い廊下の蛍光灯の明かりの下、車イスは進んでいく。


 「はい、洋服をとりましょうね~」
 服を脱がされる。

 寒さを感じるが、そんな事はお構い無しに硬い椅子に移る。

 「はい、お湯を掛けますよ~」

 声が聞こえると同時に身体にお湯が走る。最初は熱さを感じるが、だんだんと気持ちよくなり思わず、 ふ~ っとなる。

 しばらくするとテーブルに付いている自分に気付く。
 何をしていたんだろう。
 身体がポカポカし幸せな気分だ。
 

 ベッド上で天井を眺めている。
 何かが頭に浮かぶがはっきりしない。

 ガラガラと扉の開く音がし、

 「オムツを替えますよ」
 小さな声が聞こえる。

 ズボンを脱がされ、バリバリと音を感じ、右に左に向かされ、お尻にざらざらとした何かを感じる。

 何も考えない。ボーっとしていればすぐに終わることが何となくわかる。

 「終わりましたよ」 
 小さな声が聞こえ、ガラガラと扉の音を遠くに感じ、周りは暗闇につつまれる。

 そして、また天井を眺める。
    暗闇の中に何かが見えるが、それが何なのかは分からない。

 つづく

神様のプレゼント 4話

「所で鈴木さんよ。この間から働いている職員さんは優しくて綺麗じゃの」
 「わしは、 あの子の優しい声を聞くと幸せな気分になるんじゃよ」

 じいさんは、日頃の事を良く覚えている。いつもは「う~ あ~」しか言わないのだが。

 俺は、じいさん程覚えていない。

 けど、 あ~ 丁寧だな。 乱暴だな。 という事は何となく分かるし、表情からも伝わってくる。

 何も覚えていないが、感情は残っているというのだろうか。
 真っ黒い感情になる時もあれば、とても幸せな気分になる時もある。


 じいさんは続ける。

 「鈴木さんよ、わしが言った事は覚えているかい」

 この覚えているという事がとても嬉しく感じ、俺はすぐに応える。

 あ~ 覚えてるよ、じいさん。

 じいさんの話しによると、この日俺達は普通にしゃべれるのだけど、職員とは話をしないほうがいいとの事だ。

 何でも昔、

 「もう少し優しくオムツ交換しろ」

 「頑張って食べて下さい 下さいって、うるさいんだ」

 「90を超えてる男にボール遊びなんてさせるな」 

 なんて散々言ったものだから、おかしくなったと大騒ぎになったそうだ。

 まともになったはずなのにおかしな話しだよな。

 この日はとても楽しく、ずっとこのままでいたいと思うのだが、いつの間にか眠ってしまう。

 ずっとこのままでいれたら、どんなに幸せだろう。

 それでも夜は進み、真っ暗な世界が全てを包み込むようにいつの間にか広がっていく。静かに、そう、本当に静かに広がっていく。


「鈴木さん、朝ですよ~  おきて下さ~い」
いつもの声が聞こえてくる。



 つづく

神様のプレゼント 3話

真夜中に目が覚める。いや覚めていたのだろうか
少しずつ意識がはっきりしてくる。

 そろそろ隣のじいさんも起きるころだろう。
 そう考えていると、やはり声が聞こえてきた。

 「鈴木さん、起きとるか」
 
 その声はいつもと変わらない。
 俺は嬉しさを隠しながら応える。

 ああ、じいさん起きてるよ。

 じいさんは続ける。
 「今日はいったい何月何日かの」
 

 そうだなとうなずき、ベッド横にある日めくりのカレンダーを見る。

 じいさん、どうやら今日は3月3日らしいぞ。
 まあ、ちゃんとめくられていたらの話しだがな
 
 「3月?」
 「年が明けたと思ったら、もうそんなに経つのか」

 じいさんでも、そう思うのか?
 日頃は何もわかっちゃいないのに。

 「そういう、あんたも似たようなもんじゃろうよ」

 じいさんの年からしたら、もう月日なんて関係ないんじゃないか?

「人を妖怪みたいに言うんじゃないよ」
「いくつになっても、気になるもんじゃ」
 
 
 他愛もない話しが続く。

 俺は何年か前からこの施設で暮らしている。

 入った頃の事も良く覚えていないのだが、いつの頃からか意識がはっきりしなくなり、不思議な世界の中を彷徨うようになった。

 時おり聞こえる人の声と様々な顔。
 暗い闇と明るい世界が交互に訪れ、自分が何を考えているのかも良く分からない。
 コマ送りのように流れる世界で、その一瞬一瞬の中、過去も未来もない。


 それがいつの頃からか、月に1回ほど頭がすっきりし、このように会話も出来る日が訪れるようになった。

 それが今日という日なのである。
 


つづく